━組織犯罪━

 ラスベガスの過去の歴史を紐解いてみると、1970年代まで確かにカジノを取り巻く 「黒い影」は存在しました。カジノ経営を背後で巧みに操り、多額の資金を吸い上げるマフィア。 カジノ経営者と組織犯罪の関係、さらにその背後に広がる腐敗しきった政府との繋がり。     
 しかし、そんな組織犯罪も'50年代に入り「Kefauver Committee」の設立をきっかけに連邦レベルでの撲滅運動が始まります。連邦レベルでの取り組みはやがて州レベルにまで広がり、その機運はラスベガスのあるネバダ州にも訪れるのです。

 ネバダ州議会は、ゲーミング業界の更なる発展の為に、組織犯罪排除の必要性を強く感じ始めます。それが1955年、今日でもネバダ州のゲーミング運営を監督する役割を果たす「ゲーミングコントロールボード」設立へと実を結びます。 さらにアメリカ政府では、'71年にニクソン政権によってRacketteer Influenced and Corrupt Organizations Act(RICO法)が制定され、ゲーミングも含んだ組織犯罪取締りにより一層の拍車がかかるのです。  

 およそ20年に渡る連邦、州レベルでの法規制制定の動きは世論を見方に付け、 麻薬取引、贈収賄など、組織ぐるみの犯罪の前に大きく立ちはだかるのです。 そのなかには勿論、賭博(カジノ)も含まれ、ゲーミング産業からの不適格人物、団体への排除活動は進みます。  

 その努力は現在もなお引き継がれ、ネバダ州の現行法ではゲーミングと組織犯罪の関係について言及し、業界内からの払拭を明文化しています。(Chapter 463) また、ゲーミングコントロール法においても、組織犯罪に関わる決まりはその細部まで及び、 カジノ運営に必要とされるライセンス1つにも徹底したバックグラウンドの調査を要求します。ゲーミングコントロール法は、取締官に対しカジノ運営に関わる人物を調査する絶大的権限を持たせ、不適格人物を発見した場合には、 その人物をゲーミング産業から排除できる権限も持たせる徹底ぶり。 コントロールボードのカジノライセンス発行に関する決議やゲーミング産業からの不適格者締め出しの決定に対し、裁判署への申し立ては認めらず、 州最高裁判署もこれを支持します。このような厳しいゲーミング法は、ネバダ州に限らず、ニュージャージー、ミズリー、アイオワ州など、ゲーミングが行なわれる州では周知の事実。

 過去の暗い歴史からの教訓を胸に、厳しい法規制と厳格なシステムの確立により、組織犯罪の排除に成功した現代のゲーミング業界。政府と企業側とが一体になって取り組む組織犯罪排除への努力、更には、有名企業の参入が業界全体のイメージアップにも繋がり、現在のアメリカゲーミング文化を作りあげた、ともといえるでしょう。 組織犯罪は現代のアメリカのゲーミング産業からは徹底的に排除されている事は、カジノ企業の多くが大企業を株主に抱え、健全な運営を行っている事からも伺えるのではないでしょうか。

【参考文献】

Edited by William R. Eadington and Judy A. Cornelius 『GAMBLING PUBLIC POLICIES AND THE SOCIAL SCIENCES』


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