■企業分析 Park Place Entertainment その2

 今回は前回の記事を受けてPPEの強みと今後の課題を分析してみましょう。

 PPEの強み

 ロケーション

 PPEグループの強みは何といってもその立地にあります。アメリカのホテル王、エルワース=ミルトン=スタットラーがホテルの競争力を決める一番重要なものとして「ロケーション、ロケーション、ロケーション」(日本風に言えば「1に立地、2に立地、3.4が無くて5に立地」的な表現)と言ったことは有名ですが、カジノ経営の世界においてもその事はある程度適用されます。

 PPEの多くの施設はラスベガスフォーコーナーと呼ばれる観光の中心地に集中しており、ラスベガス大手系列の中では一番の立地のよさを誇ります。また、2004年より運行されるラスベガスの新たな交通手段として期待されるモノレールの路線にもほぼ全部の系列カジノがカバーされており、他系列カジノと比べた「立地の良さ」という優位性はさらに強固なものになると考えられます。

 間口の広い系列カジノのコンセプト分布

 その1でご紹介したカジノコンセプト分布をご覧いただければお判り頂けるとおり、PPE系列カジノは観光客に対して庶民派から超高級志向まで幅の広い取り合わせを提供しています。実はこのような広い間口を持ってカジノ客を上から下まで満遍なく取り込んでいく事のできるブランド分布は、グループ経営を重視するようになった近代カジノ経営(これについてはまた別の機会で詳しくご紹介いたしましょう)において非常に大きな優位性となります。

 PPEの今後の課題

 ブランドイメージ再興の必要性

 PPEグループのブランドイメージを牽引するのはグループ内最高級といわれるCeaser's Palaceです。このCearser's Palaceは1966年の建設以来、数十年に渡ってラスベガス最高級の地位を維持してきた老舗の高級カジノ。しかし、実は1990年代後半に起こった第3次建設ブーム期に建設された新たな高級カジノ群(Bellagio, Venetian, Mandalay Bayなど)の登場でラスベガス最高級の地位を奪われ、相対的にブランドイメージが低下しつづけています。また同時にPPEグループのブランドイメージを牽引してきたCeaser's Palaceのブランドイメージの低下はPPE全体のブランドイメージにまで影響を与えており、今後の経営の大きな課題となっています。

 実はこの 「Ceaser's」ブランドの再興計画はすでにPPE内で始まっており、2003年の超巨大劇場「コロッセオ」の建設に始まり、その後にひきつづき計画されている高級ショッピングモールForum Shopsの大拡張計画、新たな宿泊棟の建設など、PPEグループの最重要課題として設定されています。また、PPEは2004年よりその社名をCeaser's Entertainmentと改名する事が決定しており、系列カジノと「Ceaser's」ブランドの結びつきをよりはっきりと示し、今回のCeaser's Palaceの大改革に系列カジノ全体のブランドイメージ躍進の命運をかけているといっても良いでしょう。

 プレイヤーズクラブの立遅れ

 PPEはラスベガスの大手系列の中で一番グループ経営の進んでいる系列であるというのは「その1」でご紹介したとおりですが、実はPPEのグループ経営は人事やファイナンス部門など運営部分での統合が多く、サービス面での統合経営に関してはMandalay グループの提供するOne clubなどに比べて立ち遅れているのが現状です。 特に「PPEの強み」でご紹介した「間口の広い系列分布」を有効に活かす為には、系列内のレートの低いカジノから高いカジノへとカジノ顧客を引き上げていく事が必要。その要となるプレイヤーズクラブの統合が遅れているというのは、かなり致命的な戦略ミスともいえます。
  しかし、その立ち遅れも現在急速な改良がなされており、2004年を目処にプレイヤーズクラブの完全統一化を目指す計画である事を発表しています。

<文責;Takashi Kiso>

 

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