■ Venetian、不正ゲーム開催で100万ドルの罰金

 2002年2月に行われた抽選式ゲームで不正が行われていた疑惑で、Ventetianは100万ドルの懲罰金の支払い命令を受けた。
   Las Vegas SUN (02/25/04)

 恥ずかしい事件であるが、こればっかりは業界に関わるものの責任としてきっちりとご紹介しておかなければならないと思い筆をとる。2002年2月に行われた抽選式ゲームで不正をはたらいたという事でラスベガスの大手カジノVenetianが100万ドルの懲罰金の支払い命令を受けたというニュースである。

 問題となった不正ゲームは、チャイニーズニューイヤー(旧正月)時にハイローラー用に設置された現金や車が当たる抽選式ゲーム。本来ならば公正に抽選された当選者が賞を受けるはずのゲームにおいて、事前に当選者を決めたいわゆる「出来ゲーム」を開帳したとの事である。実行犯となったVenetianの経営責任者の一人(名前は公表されていない)が抽選の際に袖元に隠しておいたチケットを、あたかも今抽選箱から引いたかのように振舞って当選者を発表したとのこと。さらには直接犯行には加わらなかった複数人の経営責任者もこの事実を知っていたにも関わらず犯行を未然に防ぐ事が出来なかったという事実も明るみに出ている。

 

 「カジノは不正があるという噂が立つだけでその顧客を失ってしまう。だからカジノが自ら不正ゲームを運営する事はない・・・」

 誰が言い出したかわからないが、長らくこの様な事が事実として語られてきた。日本の様々なカジノ関連書籍でもカジノが不正を働かない論拠として紹介されている。しかし、今回の不祥事はそういった前提を覆してしまう大事件である。

 私、個人としての感想は・・・「本当に情けない」、の一言。Venetianで経営責任者の一人に名を連ねる程の人間ならば、この業界が世間からどのように見られていて、それを払拭する為に我々がどれだけの努力をしてきているかを知らないはずはない。この産業をいかに健全な産業に育てようかと日々努力をしている人間がいる一方で、その努力を一瞬でパーにする人間がいるかと思うとすごく悔しいです。正直、あまりに悔しくてこのニュースを見た時に思わず涙が出そうになりました。

 少し専門的なことを言うと、ニュースを読む限り今回問題となったゲームはマーケティング用に期間限定で作られたプロモーションゲーム。こういった期間限定の特殊な用途のゲームはその他の固定式ゲームと比べて法的な監督基準もあいまいで、管理が現場の判断に任されることが多い。今回の犯行はそういった隙間をついての犯行といえる。Venetianは公式コメントで「一部の不届き者の犯行には非常にがっかりしている」と述べ、今回の事件に関わった2人の経営責任者を含む4人の職員を免職とした事を発表している。

 ネバダ州のカジノ統制機関であるGaming Control Boardは今回の事件による営業停止措置やライセンスの剥奪はないとしているが、個人的には少し甘い気がする。今回の事件は現場のいち従業員によって行われた犯行ではなく、そういった不正行為を防ぐべき立場である経営責任者が自ら率先して犯した犯行である。残念ながらVenetianの経営体質そのものに問題があったとしか言いようがない。少なくともその経営構造を是正するための方策を提出し、社員教育をもう一度やり直すまで一定期間の営業停止措置を取ってもおかしくない事件である。業界全体の信用に関わる重大事件なだけに、厳しい対処で望んで欲しいものだ。また、今回のゲームのような特殊ゲームに対する法的な監督基準をもう一度みなおす事も重要である。

 一度失った信用を取り戻すには2倍の努力が必要になる。我々業界の者はもう一度襟を正して、カジノから不正を防ぐ方策に改めて取り組まなければならないだろう。今回の事件での不幸中の幸いは、ネバダ州のカジノ管理機構が正常に作動していたということである。

<文責;Takashi Kiso>

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