━自殺━

 カジノ反対派がカジノ合法化に賛成できない理由の1つ・・・「カジノと自殺」の関係。 カジノを設置すると「自殺発生件数が増える」というのはよく耳にします。 確かに、ラスベガスを抱えるネバダ州の自殺発生件数は常に全米 トップクラス。 今回はその「カジノと自殺」の関係について考えてみました。

 「クラークカウンティー(ラスベガスなどが属する郡)の大部分の自殺はギャンブルとは無関係。」 カナダのDalhousie大学、経済学部教授である Christian Marfels氏はこんな調査結果を発表しました。Marfels氏は、「自殺はギャンブルよりもうつ病などの心の病気、人間関係のこじれ、薬物乱用が大きく関与している。」と指摘します。

 経済学者であるMarfels氏が「なぜ人間は自殺するのか?」といった複雑な心理学の研究をするのは「お門違い」かもしれません。 しかし、地元クラークカウンティーの精神病専門家達もMarfels氏の調査結果には大方で賛成しています。

 地元の精神病専門家も、うつ病を初めとする心の病がクラーク郡の自殺の大部分を占めると認めています。「なぜ人が自殺を考えるのか、また、なぜラスベガスをその地として選ぶのかを考えたとき、ギャンブルを理由にするケースはごくわずか。 心の病が大部分を占める」と述べるは、ラスベガスにあるカウンセリングセンターのディレクター、Ron Lawrence氏。


ここからはChristian Marfels氏の調査を参考に実際の数字を使って検証してみます。

 Marfels 氏は検死官とともに90年から97年にかけて報告された数百にも及ぶ自殺報告書を調査した結果、「自殺」を訪問者と地元在住者の二つのカテゴリーに分け、以下の様な数字を報告書にまとめています 。

訪問者 (249件の自殺についてのまとめ)

25%・・・うつ病・精神分裂症などの心の病。
20%・・・人間関係によるもの。
15%・・・ドラッグ・アルコール。
15%・・・病気。
10%・・・犯罪。
6%・・・・ギャンブル。
9%・・・・その他。

地元在住者*

32%・・・心の病。
21%・・・人間関係。
21%・・・病気。
12%・・・ドラッグ・アルコール。
6%・・・・犯罪。
3%・・・・ギャンブル。
5%・・・・その他。

 Marfels 氏は調査後、「ギャンブルだけを直接、自殺の原因と結論付けるのは難しい。様々な要因が複雑に絡み合い自殺を起こすのである。また、 自殺を起こす大部分は男性であり、女性は自殺を起こす前に もう一度よく考え直し自殺を踏みとどまる傾向にある。」と述べています。

 さらにMarfels 氏は「クラーク郡で自殺を起こす人の多くは、クラーク郡にやって来る前にそれぞれに問題を抱えている。 そんな彼らが最後の望みを託し、経済発展の目覚しい夢の街・クラーク郡のラスベガスを訪れる」としています。


 クラーク郡の人口増加率は全米トップ。毎月何千人にも及ぶ人々がこの地で新しい生活をはじめる為、全米各地からやって来ます。 例えば、仕事を求め経済発展著しい「夢の地」ラスべガスにやってくる人々。 そんな「最後の望みの地」で仕事を見つけられなかった場合、彼らはどう考えるでしょう。ラスベガスで見つけられなったら、どうせ他の都市でも・・・。

 そんな人々がラスベガスで自殺を起こす事も忘れてはいけないでしょう。 クラーク郡の自殺発生件数は確かに全米トップクラス。しかし、その裏側にある数字の「トリック」に騙されないように注意しないといけません。  

*) 自殺発生件数は2,123とあまりにもMarfels 氏を初めとする数名のスタッフには多いので、その中から10%の標本をとって調査したもの。

*)昨年度のクラーク郡で発生した自殺のおよそ80%が男性。

昨年(2001年)度のクラーク郡では292件の自殺が報告されています。 その内、88%は地元在住者。

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