━防止・対応策 その2(犯罪)━ 

 まず最初に考えられる有効な対策として、前回にも少しお話しましたが、 カジノからのタックスを治安維持に役立てるという案。これは、世界各地、カジノを抱える政府が必ず行う対応策の1つです。 ここでは、アメリカのカジノ都市を例に考えてみましょう。

 ネバダ州政府が発表した2001年度のゲーミングタックスによる歳入は、 $631,751,000となっています。 このゲーミングタックスは一度、一般歳入としてネバダ州政府へと入り、教育、インフラなど様々な分野へと 支出されます。この中に、治安維持ともっとも関わり合いの深いパブリックせーフィティーへ$34,183,331支出されているのが確認できます。

 次ぎに、ニュージャージ州では、ゲーミングタックスを高齢者や社会的弱者に役立てるという名目でカジノが合法化された背景もあり、ゲーミングタックスのほとんどは福祉へと助成されています。それでも、2001年度には、$437,050,173の税収に対し2%が治安維持を目的に費やされる結果となっています。

 また、アメリカでネバダ、ニュージャージー州に次ぎ3番目に高いゲーミングの売上高を誇るミシシッピー州では、カジノ税 により、警察省予算がカジノオープン前の3倍となり、高い給料での警察官の新規採用へと繋がっています。

 さらに、地域活性化を目的に最高ベット額$5などの制限付きの小規模カジノが存在するアメリカ・コロラド州。 ここでは、ゲーミングタックスがゲーミングコミッション運営費にまず充てられ、その残りが各方面に分配されます。 残りの49.8%が州への一般歳入になり、そこから11%が交通渋滞 などカジノと関係が深い問題解決へと支出されるのです。

 これらのケースの様に、カジノのオープンは多大な税収を生み出し、警察官の増員、インフラ整備などを通じ治安維持へと役立っています。 その結果、ラスベガスの通称「ストリップ」と呼ばれる目抜き通りやダウンタウンには、警察官が頻繁に巡回し、夜でも安心して歩けるアメリカの数少ない観光地となっているのです。

 さて、その他の犯罪対策として考えらるのが、「カジノ」自体が果たす役割です。

 カジノ内の犯罪防止にまず挙げられるのがセキュリティー。 セキュリティーがカジノ内を巡回し、不審者へのIDチェックなどを行い、安全なゲーミング環境作りに務めます。また、カジノ内の至る所に設置された防犯カメラ がありとあらゆる犯罪行為に眼を光らせるのです。

 防犯カメラを24時間体制で監視するのが、サベイランスと呼ばれる部署。このサベイランスでは、強盗、すり、イカサマなど、カジノ内で発生が予想される犯罪に対して、どのような手順で対応するかなど、事細かいマニュアルが用意されています。 サベイランスは事件発生後、セキュリティーやカジノマネージャー、 警察、ゲーミングコントロールなどと協力しながら、 問題解決にあたるのです。

 カジノ誘致により予想される交通渋滞やけんか、すりなどの事件・事故は、カジノ税収とカジノのセキュリティー(サベイランス)の二本柱でコントール可能、とするのがカジノをかかえるコミュニティーの共通認識になりつつあるようです。

 次回はカジノ設置によって起るカジノ特有の犯罪についての考察です。

【参考文献】 Smith,G ., Wynne,H., & Hartnagel,T. (2003) Examing Police Records to Assess Gambling Impacts: A Study of Gambling-Related Crime in The City of Edmonton

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