━グループ化と顧客共有システム━
 
  1990年代初頭、アメリカ各州の急速なカジノ合法化の流れにともなってアメリカカジノ産業には「グループ化」と「巨大化」という2大トレンドが起こりました。カジノ合法化によって急速に広がるカジノ市場で、「勝ち組」となったのは市場の急速な拡大に対応できるだけの豊富な資金力とノウハウを持つグループカジノ企業だったのです。  
 そしてこのグループ化、巨大化のトレンドをを象徴する出来事が、2000年のMGMグループとミラージグループの合併。当時、ラスベガスの2大カジノ勢力と呼ばれていた巨大カジノグループ同士の超大型合併は業界全体を震撼させることとなりました。  

 さて、こういった背景において急務となったのが「効率的な顧客共有システム」です。  

 1988年に行われたカジノグループ「ハラス社」の行ったリサーチによると、カジノ顧客の大部分はグループ内の単一カジノだけを利用するのではなく、全国各地に広がる系列カジノをまんべんなく利用する傾向があるという結果が報告されています。  

 この結果に基づけば、各グループ内カジノの持つ顧客データを一括管理し横断的なプロモーション活動を行うことが、グループ全体の収益向上にとって非常に重要であることが分かります。そして、この顧客共有システムにおいて競合他社に先行したのが前述の「ハラス社」です。ハラスは1998年、米国のホテル業界では初となる全米規模の顧客データベース・ネットワーク「Winner's Information Network(WINet)」を完成。このシステムにより、同社の傘下にあるすべての施設は、リアルタイムに顧客情報をやり取りすることができるようになり、各グループ内カジノはグループ内のすべてのカジノ顧客リストの中から抽出された特定の顧客層に対して効果的なプロモーション活動を展開することが可能になったのです。  

 そして同時にこのWINetが発展する形で生まれたのが「Total Rewards」という新しい形の顧客サービスシステム。この「Total Rewards」はこれまで各カジノごとに管理していたプレイ情報をWINetを通して統一化することに成功しました。これによって、顧客はこれまでそれぞれのカジノごとでしか引き出すことの出来なかったコンプポイントやキャッシュバックポイントを系列内のどのカジノでも引き出すことができるようになったのです。  

 このシステムは顧客のグループ内カジノでの回遊性を高め、より高い顧客ロイヤルティを創出すること成功しハラス社のグループ全体の売上に大きく貢献したのです。  

 実際に数字を挙げてみると。  
 「Total Rewards」の開始以後、ハラス傘下の各拠点の売上げと利用者数(顧客数)は急速に増加。1998年における各施設の利用者数の平均は、対前年比で72%の伸びを示しました。また、ハラスおける1拠点当たりの売上げも、1997年の1億1,300万ドルから1998年は2億4,200万ドルへと一挙に膨れ上がったのです。加えて、ハラスは1999年、5億9,400万ドルの利益を上げたが、そのうちの5,000万ドルが同社の施設を複数利用する顧客によってもたらされたものだといわれています。  

 このハラス社の「Total Rewards」システムの成功は競合各社の顧客共有化競争に火をつけました。  

 ハラス社に引き続き、 ステーションカジノグループが「Boarding Pass」、    
 マンダレイリゾートグループが「The One club」、  
 パークプレイスグループが「Park Place Conection」を発表。 

 それぞれ名前は違うもののすべてがハラス社の開発した「Total Rewards」のシステムを踏襲したものです。また現在、MGMミラージグループも統一顧客管理システムを開発中との事です。

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