━Racino(その2)━

 アメリカの新しいRacinoの詳細なデータを入手しましたので、ここで前述の記事の補足をしたいと思います。アメリカで現在カジノゲームを採用しているレース場は、デラウェア、アイオワ、ルイジアナ、ニューメキシコなどを含む6地域、その数は17にも及びます。以下はそれぞれの州の詳細なデータです。

State
Number of Tracks
Number of Devices
Total Annual Win ($million)
Delaware
3
5,327
$556.8
Iowa
3
3,574
$314.7
Louisiana *
1
1,492
$54.4
New Mexico
4
2,115
$115.7
Rhode Island
2
2,478
$281.0
West Virginia
4
7,021
$595.9
Totals
17  
22,007
$1,918.5

 Will Cummings & Associatesの調査に基づく  

 トータル17レース場に22000台のスロットマシン。平均すると1レース場あたりに1300台のスロットマシンが存在する事になります。この1300台のスロットマシンという数字はラスベガスでは中規模カジノ以上のマシン保有台数です。またレース場におけるスロットマシンの年間総収益は$1,918.5 million(約2300億円)にも及んでおり、それぞれのレース場でのスロット経営規模がいかに大きいものかという事がわかるはずです。  

 アメリカの古典的なレース型ゲーミングが日本の公営ギャンブルと同様に衰退の一途をたどっているという現状は前回の記事でご紹介したとおりですが、このようにカジノマシンゲームを採用した各レース場はその収益によって息を吹き返しはじめています。この様なアメリカの「レース場+カジノ」の成功を分析してみると、そこにはいくつかの要因が考えられます。

1.レース場が持つ既存顧客とカジノ施設のターゲットとする顧客が一致すること
2.既存のレース場内施設を再利用する事でRacino建設の初期投資を最小化することができること
3.レース場は一般的に立地が良い場所(大都市近郊)に立地する事が多く、アクセス(道路、公共交通機関)が非常に良いこと  

 以上のような要因が重なり合い、現在アメリカではRacino市場が急速に広がっているのでしょう。また、まったく新しい地域にカジノを新規で建設するのに比べてRacinoの新設は地域住民、行政の理解を得やすいのもこのRacino市場の急速な広がりの一因だと考えられます。  

 さて、以上のようにアメリカのレース場は復活しつつありますが、今後はこの新しく手にしたスロットマシンによる収益をいかにレース場そのものの改革につなげていくか?が課題となってくるでしょう。各レース場はスロットマシン設置によって収益体質は断然良くなっているものの、古典的なレース型ゲーミングの人気が減退してきているというそもそもの問題が解決されたわけではありません。レース場が本当の意味で「Racino」として生まれ変わるためには、レース場のイメージを一新してしまう位の根本からの構造改革が求められています。

参考資料: Economic and Political Dimensions of Slot Machines at Racetracks presented by William R. Eadington in Tucson, Arizona The Institute for the Study of Gambling and Commercial Gaming WEBサイト(http://www.unr.edu/gaming/index.asp)

 

戻る