━Racino(その1)━ 

 日本の競馬、競艇を含むレース型ゲーミングは1999年の「競馬ブーム」をピークとして下降の一途。数々のレース場が売上低迷で赤字となり、撤退や存廃論議が各自治体で起きています。多くの専門家は日本の長く続く不況がその原因と考えているようですが、実はこの傾向は日本だけに限らないもの。アメリカ、オーストラリア、カナダを含め、多くの国でレース型ゲーミングが下降傾向にあります。カジノを含め様々な形式のゲーミングビジネスが生まれ、新しいゲームが提供されるにつれて、伝統的なレース型ゲーミングのシェアが次第に目減りしていっているというのがこの世界的な人気減退の一因。また、ギャンブルに「賭博」以上の「娯楽性」を求め始めた顧客の需要変化に、伝統的なレース場が対応しきれていないというのも大きな原因でしょう。  

 この様に世界規模のレース型ゲーミングの人気減退というのが、日本を含む世界のトレンドですが、これに対応すべく登場したのが今回ご紹介する「Racino」です。Racinoとは「Race」と「Casino」を複合させた造語であり、その名の通りレース場とカジノを複合してしまおうという新しい試み。この「レース場+カジノ」という発想は、ゲームの回転数が一日に9〜12ゲームと限られてしまうレース型ゲーミングの大きな欠点を埋め、同時にレースの間の待ち時間に顧客に娯楽を提供できるという絶妙な組み合わせといえます。Racinoは米国、カナダで1990年代から注目され始め、その後非常に高い成長率を見せております。  

 一例として、カナダ、オンタリオ州のFort Erie Race Trackを見てみましょう。フォートエリーは、100年以上の古い歴史を持つカナダでも長い伝統を持つレース場ですが、他のレース場と同様に長年の間売上低迷に苦しんでいました。特に20マイルという目と鼻の先に巨大カジノ「カジノナイアガラ」が建設されて以来、収益の落ち込みは予想を越えるものだったようです。そのフォートエリーが場内にスロットマシンを設置し、Racinoをスタートさせたのが1999年。その後、現在までレース場を訪れる顧客数も増加、スロットマシン、レース場共に増収をみせています。日本では既存の公営ギャンブルとカジノは顧客を喰い合うもののように考えられ、公営ギャンブル関係者にはカジノ合法化反対を唱える者も多いですが、実は少しの発想の転換でこんなコラボレーションも考えられるのです。  

 このフォートエリーの例の様に、現在のRacinoはレース場にマシンゲームを追加するというのが主流ですが、現在提供されるゲームの種類も急速に増え、次第に本格的なゲームが提供されるようになってきております。最終的に通常のカジノでみられる多くのゲームが提供されるようになり、本当の意味での「レース場+カジノ」となる日も近いでしょう。さらにここにカジノの持つギャンブル以外の機能(レストラン、宿泊施設、その他娯楽施設など)が追加されれば、カジノリゾートならぬ、「Rasinoリゾート」なんていう発想も出てくるかもしれません。  

 現在、苦境に立たされている日本のレース型ギャンブル市場。少し発想の転換をしてみれば、そこに大きなビジネスチャンスが転がっているのです。

 

戻る