カジノサービス論 その1

 今日、サービス業の1つに数えられるカジノもアメリカカジノ史を 紐解いてみると、合法化当初はサービス業と呼ぶには程遠い、 ギャンブル好きの集まる鉄火場に過ぎませんでした。 ディーラーは客にギャンブルさせ、客はギャンブルする為にカジノに足を運ぶ。 つまり、カジノはギャンブルという枠に縛られた存在でしかなかったのです。

  しかし、カジノがレストランやバーを併設し、ホテルなどを抱え込み巨大化する過程で、サービスといったそれまでに無かった概念が芽生え始めます。 笑顔でカードを配るディーラーや無料アトラクションの数々。 カジノは賭博のみのギャンブルビジネスからエンターテイメント性を持たせたゲーミングビジネスへと脱皮するのです。

 さらに、90年代の全米各地で起きた爆発的なカジノ建設ラッシュにより、 各カジノ間での顧客の奪い合いが激化。 カジノが生き残りをかける中、徹底したカスタマーサービスを掲げ、 カジノのサービスは経営を左右する重要な要素として認識されるのです。

  さて、カジノサービスを語る上で、欠かす事の出来ないものにコンプ、 と呼ばれるものがあります。 コンプは顧客のプレー実績に応じて提供される優遇サービス。 その内容は、レストランでの食事からショーチケットや部屋代等多岐に渡ります。 カジノがホテル、レストランやシアターを持つ複合型施設になった背景と合致し、コンプはカジノにとって顧客満足度を向上させる必要不可欠なサービスと位置付けられています。

  そのコンプ発行の権限を持つのがカジノサービスを集約させた職種であるカジノホスト。 カジノホストはコンプを巧みに操り、顧客が持つ様々な問題、不満を解消し、満足する滞在を提供する役割をその任務とします。 カジノホストはディーラーやフロアーパーソンなど、現場最前線のスタッフと協力し、カジノサービス向上に努めるのです。

 コンプ、カジノホスト、無料アトラクションはカジノが提供するサービスのほんの一部でしかありません。 サービスとはおよそ無縁な所から出発したアメリカのカジノ産業。 しかし、今日カジノがサービス業である事は誰の目にも疑いの無い事実。

  「顧客一人の為に、ジェット機も飛ばす」。

  もしかすると、カジノは究極のサービス業なのかもしれません。

<文責;Masayuki Higashitani>

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