■企業分析 MGM Mirage その2

  MGMの強み

 ブランド訴求力

 MGMの強みはなんと言ってもそのブランド力にあります。MGMはここ数年、ラスベガスの大手系列の中でも高級路線を最も強く打ち出しているカジノ系列。そのブランド戦略の中心はラスベガス最高級と言われるべラージオを牽引役として系列全体の高級イメージを維持。そして系列内でファミリーリゾート色の強かったカジノ(MGMグランド、TI)を高級路線に変更し全体のブランド力を底上げすることにあります。(この辺りはもう少し掘り下げると面白いのでまた別の機会に詳しくご紹介しましょう)
  さらには、2004年に系列内では比較的庶民派であったゴールデンナゲットの売却を決定し、「系列全体の高級化路線に付いてこれないカジノは思い切って切り捨ててしまう」という明確かつ徹底した戦略をとっています。


MGMの目指す高級化戦略
表にしてみるとMGMの目指す方向が顕著に判る

 同時にアメリカ東海岸、アトランティックシティで Boyd Gamingとの共同プロジェクトとして2003年にオープンしたBorgataもアトランティックシティいちの高級カジノとして順調に滑り出しており、ラスベガス以外の地域でもブランド訴求力がうなぎのぼり。大手系列の中では一番元気の良い企業です。

 

 MGMの今後の課題

 経営統合の立ち遅れ

 MGMグループ最大の経営課題は、各系列カジノの経営統合の立ち遅れにあります。1990年代後半以降、大手カジノ系列は統廃合を繰り返し、「大型化」と経営の統合による「効率化」を目指していますが、そういった流れに圧倒的に乗り遅れているのがMGMグループ。特にMGMグループの提供するプレイヤーズクラブは他系列が次々と統一化を進める中で、いまだに各カジノごとの別々の展開。キャッシュバックレート、コンプレートは比較的早い時期に統一化されたものの、肝心のその後のコンプアカウントの統一化が遅れに遅れており今後の大きな経営課題となっています。業界内ではプレイヤーズクラブの統合化が次世代カジノマーケティング上のカギとなると言われる中でこの立ち遅れは将来的に非常に大きな痛手になる事が予想されます。

 ボードウォーク

 分析その1でもご紹介した通り、現在のMGMが目指す高級化戦略からただ一つ外れる系列カジノ、ボードウォーク。実はボードウォークの裏手には現在、べラージオの従業員用駐車場として利用されているMGM所有の広大な敷地が存在し、MGMはこの敷地とボードウォークを利用して新たなカジノ建設を計画しているのでは?というのが大方の予想です。この場所はラスベガスの目抜き通りストリップのど真ん中に残された最後の用地であり、業界ではMGMがこれをいかに料理してゆくかが非常に注目されています。

 顧客の喰い合い

 MGM系列内のカジノが総じて高級路線を目指しているというのは前述の通りですが、専門家の中にはその戦略に疑問を投げかけるものも存在します。というのも、系列全体が高級路線を目指す中でそれぞれ狙っていた顧客層に境目が無くなり、同一系列内で顧客を喰い合うようになるのでは?という見方もあるためです。
 特にMGMは他系列と比べラスベガス近郊に系列カジノを集中させているため、それぞれのターゲットとする顧客層が近くなればなるほど同地域同系列内で顧客奪い合いが起こるのは確実。また、現在のようにプレイヤーズクラブが統合されず各系列がバラバラに顧客データベースを管理している状況下ではこういった現状により一層拍車がかかってしまいます。
 こういった問題を回避しMGMの強み活かしていくためには、グループ内での顧客データベースをいち早く統合し、現在のような各カジノ個別のマーケティング手法からグループ全体の統合マーケティングに移行すること、そして強いブランド力を活かしてより広い地域に進出することで同一地域内での同系列の競合を回避してゆくことが必要。2003年にオープンしたアトランティックシティのBorgataはこのための布石といっても良いでしょう。

<文責;Takashi Kiso>

戻る