■企業分析 MGM Mirage

 MGM Mirage(以下MGM)は、2000年、当時ラスベガスの巨大系列カジノグループとしてライバル同士であったMGMグループとMirageグループが大型合併して生まれました。MGMはアメリカ全土の12のカジノを運営、総従業員数45000人を抱える世界有数の巨大カジノグループ企業ですが、その一方で系列カジノの大部分をラスベガスとその近郊に集中させるというローカル色の非常に強い企業でもあります。

 以下ではMGM系列ラスベガス内8つのカジノを「高級志向⇔庶民派」「観光客向け⇔ビジネス客向け」という分布図上に配置してみました。

 ご覧のように、ラスベガス最高級と言われる五つ星カジノベラージオを筆頭に、観光客向けの高級志向カジノを多く抱えるのがこのグループの特徴。MGMグランドは巨大コンベンションセンターを抱えるため「ビジネス、観光」の丁度中間的位置付けになっていますが、元々観光客志向のテーマ色の強いカジノだったことと「世界で2番目に大きいホテル(総客室5005室)」という名声も相まって、観光客にも非常に人気の高いカジノです。

 以下ではそれぞれのカジノを別個に分析してみたいと思います。

  1. ベラージオ
     1990年代後期の第3次建設ブーム期に建設されたラスベガスを代表する高級カジノ。アメリカにある数あるカジノの中で唯一アメリカのホテル評価基準で最高位となる「五つ星」を受賞した名実と共にラスベガス最高級ホテルである。また、カジノの正面に広がった人口湖とそこで行われる噴水ショーは様々な映画や雑誌紙面を飾るラスベガスの象徴ともいえるアトラクションとなっている。

  2. ミラージ
     合併前の元Mirageグループのオーナー経営者であったスティーブウィン氏をラスベガスのスーパースター経営者たらしめたカジノ。南国の熱帯雨林をテーマとしたその外観と道行く人々を魅了する無料アトラクション「火山ショー」。ラスベガスで1990年代から始まる「テーマカジノ」ブームのきっかけとなった、ラスベガスカジノ史上において非常に重要なカジノである。

  3. MGMグランド
     総客室数5005室という世界で2番目に大きなホテルとして名高いMGMグランド。1993年の開業当時はオズの魔法使いをテーマとしたテーマホテルであったが、その後紆余曲折の末、現在はテーマ性の取り除かれた形で運営されている。自前の巨大アリーナ、巨大コンベンション施設などを抱え、MGM系列内では唯一コンベンションを目的としたビジネス客をも集めるカジノである。

  4. NYNY(ニューヨーク ニューヨーク)
     アメリカの代表都市ニューヨークをテーマとしたテーマカジノ。ニューヨークの象徴ともいえる摩天楼を模したその客室棟は非常に有名。1990年代後半以降、MGMグループ内でそういったテーマ性が取り除かれるカジノが増える中で、未だ強いテーマ色を残すカジノである。また2003年より新たなナイトショーをスタートさせた事で注目を浴びる。

  5. TI(トレジャーアイランド)
     1993年の建設当時は「海賊、宝島」をテーマとしたカジノであったが、2003年のカジノ大改革時にそのテーマは取り除かれ、名称も「TI(ティーアイ)」に変更される事となった。現在ではMGMグループ内で唯一の「比較的裕福なヤングアダルト層」をメインの顧客としたカジノへと方向転換を図っている途中。その方向性が成功するかどうかはもう少しこのカジノの行く末を見守る必要があるだろう。

  6. ゴールデンナゲット
     グループ内で唯一、ラスベガスダウンタウン地区に立地するカジノ。合併前の元Mirageグループのオーナー経営者であったスティーブウィン氏がラスベガスで初めてカジノ経営をスタートしたカジノ。1946年建設の老舗カジノであったゴールデンナゲットはウィン氏の経営参入によって瞬く間にダウンタウン最高級カジノにまで成長し、ウィン氏はこの成功によってラスベガスの目抜き通りであるストリップ地域への進出をはたす事となった。ゴールデンナゲットは2003年現在もダウンタウン地区最高級のカジノとして評価を受けている。

  7. ボードウォーク
     元々はアメリカの大手モーテルチェーンであるHoliday Inn経営下にあったカジノホテル。1969年建設というストリップ地域においては比較的古いカジノであるが、2002年よりMGMグループに買収される事となった。高級志向の強いMGMグループにおいて唯一コンセプトのずれた庶民派カジノであるため一部ではその買収を疑問視する者も存在するが、この買収はその立地による要因が強い。実はこのボードウォーク周辺はMGMの系列カジノが密集する地域であり、以前からこのカジノの存在がMGMのカジノ開発計画上の妨げとなっていたという経緯があるようだ。

 MGMの更なる深い分析は次回に続きます。

<文責;Takashi Kiso>

戻る