━代替効果 その3━

 今回、ご紹介したアトランティックシティにおいてのカジノの代替効果については、1995年に発表されたカジノチェーン企業Harrah's社による調査書「Atlantic City and Casino Gaming」の中でも言及されています。また、その調書ではここで私が今回ご紹介した方法以外の代替効果に対する対処法も紹介されています。実は私自身は個人的にこのHarrah's社の提示する方法が良い解決策だとは思っていないのですが、一応ここで皆様にその内容をご紹介しておこうと思います。

 Harrah's社の提示するアトランティックシティの代替効果に対する対処方は、  

 複合施設としてのカジノリゾートではなく、ギャンブル場のみの中小のカジノの建設を積極的に進めるべきだ  

 というものです。実はアトランティックシティには「カジノには最低でも500室以上の客室、レストラン、駐車場が無ければならない」という法律が存在します。これはアトランティックシティのカジノ政策があくまで観光客誘致を目的としており、「街の外からやってくる宿泊客を狙ったカジノ」でなければ建設を認めないという大前提から生まれたルールです。  

 しかし、Harrah's社はこの法律があるために各カジノは必然的に巨大化、複合施設化してしまい、その結果観光客がカジノの外に出くなってしまうとしています。逆にそのルールを撤廃してしまえば、レストランや宿泊施設の無いカジノがたくさん出来、自然と観光客はカジノから街へ出て行くだろうという論理ですね。  

 確かに一理はありますが、私自身はこの「カジノに最低限の宿泊施設や飲食店を要求する」法律は、観光客誘致というアトランティックシティのカジノ政策の最終目的に沿ったものであり、決して悪法だとは思っていません。また、宿泊設備を持たない中小のカジノを認めてしまうと、それによって新たな問題が発生する可能性もあるので個人的にHarrah's社の提示する方法が最善のものとは考えていません。しかし、観点を変えてしまえばそういったアイデアもあるという事で、Harrah's社の調査書をここで紹介させていただきました。

参考文献; Atlantic City and Casino Gaming, Harrah's Entertainment, Inc. 1995

 

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