━代替効果 その2━

 ではこのような代替効果を防ぐために、カジノ誘致をする既存産業はどういった工夫が出来るのでしょうか?  

 まず第一に求められるのは、地元中小商店の組織化です。カジノのような巨大な資本には個別の中小商店では対抗しきれません。地域の商工会、中小企業同友会などを中心として地元商店が協力し合い、資本を集中し、一丸となって大きな資本に対抗することが必要です。  

 第二には、そういった活動に対する行政のサポートが不可欠でしょう。実はアトランティックシティの失敗の原因は、カジノにあまりにも偏った地方行政政策にあるとも言われています。カジノから徴収した税金の一部をそういった地元産業の活動資金として還元してゆくシステム作りを、カジノスタートの計画段階からしっかりと立てておくことが重要です。  

 このような二つの対抗策が絡み合い巨大カジノリゾートとの共存で一定の成功を収めたケースとしては、ラスベガスのダウンタウンエリアが挙げられます。  

 1980年代末から始まったラスベガスの巨大カジノリゾート群の誕生により、古くからラスベガスの中心として栄えてきたダウンタウン地域は減退の一途をたどります。そんな中、事態を重く見た地元商工会が一致団結して作ったのが、1995年に7000万ドルという巨額な投資で完成させたハイテクアーケード。そのアーケードでは搭載された210万個の電飾を利用した無料ショーが毎晩繰り広げられており、ラスベガスの新たな観光スポットとしてダウンタウンエリアに観光客を呼び戻す事に成功しました。  
 その後も、ラスベガスの商工会は共同で立体駐車場やショッピングセンターを建設するなど、巨大カジノ資本に負けない積極的な投資を続けています。  

 残念ながら、この様な積極的な投資を行っていながらもラスベガスダウンタウン地域は依然として巨大カジノリゾートに押され気味であるのは事実です。しかし、この様な地元産業と巨大カジノリゾート間で行われる「健全な競争」が都市としてのラスベガスを活性化させ、より多くの観光客を集めているのも事実。その結果、ラスベガスの都市全体が今世紀稀に見る急成長を果たし、「世界一の娯楽都市」と呼ばれるまでになったという事を考慮に入れると、ラスベガスの地元中小産業と巨大カジノ資本との関係は成功していると言っても良いでしょう。

 

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