━社会的コスト(その2)━

 さて、今回は社会的コストその1の続きです。  

 前回の記事で、ギャンブル中毒者一人あたりに生じる平均社会的コストが判りました。今回はそれを元にギャンブルによって社会全体にどれほどのコストが生じているのか?を日本の首都圏を例に挙げて推定してみましょう。  

 地域の成人人口(ギャンブル可能な人口)中に存在するギャンブル中毒者の割合に関しては様々な研究がありその数字には大きな幅があります。2002年にRachel Volbergによって調査された「Gambling and Problem Gambiling in Nevada」ではネバダ州の全成人人口中の約3.5%が何らかのギャンブル依存症状をもっているとしています。これはこれまでの様々な研究で発表された割合の中ではかなり高い数字なのですが、今回は仮にこの割合を使ってみることにします。  

 2002年に東京都の発表した「東京都都市型観光資源の調査研究報告書」によると首都圏の周辺人口は約3342万人とされています。日本の全人口における成人比率はおよそ79%(総務省統計局の人口統計による)といわれていますから、首都圏における成人人口(=ギャンブル可能人口)は  

 3342万人×79%=2640.18万人  

 となります。これにRachel Volbergによって発表されたギャンブル依存者比率を掛け合わせると、  

 2640.18万人×3.5%=92.4万人  

 のギャンブル依存者が首都圏に存在する事が推定できます。  

 前回ご紹介したKeith Schwerの調査に基づくと、ギャンブル依存者一人あたりに生じる社会的コストは$8207/年(約98.5万円/年, $1=\120換算)とされていますから、首都圏全体で  

 92.4万人×98.5万円=約9100億円  

 の社会的コストが発生していると試算されます。こういった社会的コストは首都圏の公営ギャンブル、パチンコ、宝くじ、そしてもしカジノ合法化が実現したばあいはカジノが、何らかの形で補完していかなければいけない社会的コストと言えます。  

 しかし、実は今回算出の大前提として利用したKeith Schwerの研究には様々な反論があり、ここで算出されたコストが正しいといえる数字なのかにはまだかなりの疑問が残っています。次回はそういった様々な反論をご紹介してゆくことにしましょう。

 

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