━社会的コスト(その1)━

  さて、今回は2003年2月に発表された最新の研究を元に、カジノの持つ社会的コストについて考えていきたいと思います。2003年2月にR. Keith Schwerによって発表された「Beyond the Limits of Recreation」は、これまで専門的な研究の少なかったカジノの及ぼす社会的コストを実際の数字で弾き出す事を試みた研究として注目を集めています。この研究はギャンブル中毒症となり、その後社会復帰を果たした匿名の元ギャンブル中毒症患者カウンセリンググループから選出された99名へのアンケートを元に様々な社会的コストに迫っています。

 「Beyond the Limits of Recreation」ではカジノによってもたらされるコストを大きく大きく4つに分け、さらにそれを細かく細分化しています。以下は細かく分類されたコストをひとつずつご紹介してゆきます。

<ギャンブル中毒症患者一人あたりに生じる社会コスト>

雇用関連  
 怠慢労働 $1,740
 辞職 $2,813
 解雇 $1,423
 失業保険 $41

負債/裁判関連  
  破産/負債 $9,556  
 民事訴訟/調停等 $735

治安維持関連  
 窃盗 $1,819
 逮捕 $99
 刑事訴訟 $89
 禁固 $84  
 保護観察 $250

中毒症治療/福祉関連  
 中毒症治療 $286  
 その他の福祉サービス $93  
 フードスタンプ(注1) $53

総計 $19,085/年

(注1) 貧困者に食料品を購入するための金券を配布する公共サービス。一種の生活保護と考えて良い。  

 ただし、この調査の対象となったサンプルは元々カウンセリングを必要とするほどに重度のギャンブル中毒症であった人々であり、一般的な水準から考えるとかなり多くコストを見積もりすぎているとの事。Keith Schwerは平均的な中毒症患者の一人あたりの社会的コストは、ここで導き出されたコストのおよそ43%程度である「$8207」が妥当であろうと結論付けています。  

 次回はこの中毒症患者一人当りの社会コストをどのような形で社会全体のコストとして換算していくか?について考えてみましょう。

参考;Beyond the Limits of Recreation: Social Costs of Gambling in Southern Nevada, R. Keith Schwer他, 2003

 

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