━南国リゾートとカジノ━
 
 沖縄は日本国内でもっとも古くからカジノ合法化運動が続いている地域です。一説には1970年代の第一次沖縄振興開発計画に沖縄のカジノ合法化論議は始まり、およそ30年に渡る歴史があるともいわれています。
 さてそんな沖縄のカジノ合法化論議で今も続く重要な論点となっているのは、沖縄の持つ「南国リゾート」のイメージに新しく導入される「カジノ」がどう影響を与えるのか??というもの。こういった論議はこれまで「海と空と太陽の街」として売ってきた宮崎県など、日本南部でカジノ誘致運動を続ける都市で同様に起こっている論議です。

 「南国リゾートとカジノ」の論議は決して日本に限った論議ではありません。アメリカ合衆国50州の内、合法ギャンブルを持たない州はユタ州、ハワイ州のたったの2州。ユタ州はギャンブルに否定的な宗教であるモルモン教徒がその州民の大多数を占めるためギャンブル合法化が否定されつづけてきた地域、そしてハワイ州は…まさに今回取り上げた「南国リゾートとカジノ」の論議がカジノ合法化が否定されつづける大きな要因となっています。
 「南国リゾートにカジノが入る事でこれまで広く持たれていたイメージが代わり、逆に観光客を遠ざけてしまう可能性がある…」それを恐れたハワイ州の住民はこれまで幾度となく持ち上がってきたカジノ合法化を退けてきたのです。また同じく、アメリカ国内ではありませんがアメリカの植民地であるグアム島(アメリカ領)もカジノ待望論が存在する中、長い間それが実現される事無くここまで来ました。  
 しかし一方で、こういった地域においてもカジノ合法化に対する要望が非常に高いのも事実。1994年にグアム観光局が観光客に対して行った一連の出口調査によると  

「今後グアムに期待するアトラクションは?」という問いかけに対し  

 日本人観光客の内およそ40%がカジノと答え、「期待するアトラクション」として第1位になった他、韓国人観光客の23%、台湾人観光客の7.7%が同様にカジノ建設を期待しているなど、特に極東アジア圏の観光客からのカジノ待望論が高いことが判ります。日本人、韓国人、台湾人はグアムの観光客の大部分を占める3大マーケットですから、地域の専門家の中にはカジノが必要だと主張するものやはり存在し、グアム大学のMYK POWELL氏は、もしグアムにカジノが出来たとしたら、年間約36万人のカジノ利用客を期待できるのではないか??などと予測しています。  

 ハワイ、グアムというメジャーな南国リゾート地が以上のような背景でカジノ合法化に踏み出せない中、先陣を切ってカジノを合法化を進めたのが、そういったメジャーなリゾートに追随するリゾート地の数々。アジア諸国ではセブ島(フィリピン)、テニアン島(アメリカ領、サイパンの隣島)などが真っ先にカジノ建設を果たし、競争激しいアジア圏のリゾートで人気を伸ばしています。その他、シンガポール、インドネシアなども現在観光客誘致を目的としたカジノ合法化を検討中といわれており、そういった他のリゾートの追い上げにハワイ、グアムが危機感を感じているのも事実と言えるでしょう。  

 さて、お話を日本に戻すと、そう言った激しい南国リゾート地の国際競争の中で、沖縄を含めた日本の南部地域はどういったスタンスで戦うのか?それが私達の一番の注目点。当サイト内でも繰り返しご紹介している通り、カジノ建設は地域経済や社会に良くも悪くも大きな影響を与えます。また、カジノが持つイメージによって地域の既存のイメージが大きく変わってしまう可能性も否定できません。「地域の開発をどのように進めていくか」「地域をどのようにして売り出すか」というのは、最終的には地域に住む住民の皆さんが判断する事。合法、非合法どちらに転ぶにしてもしっかりとした論議をつくした上での論理的な判断を願いたいものです。

参考文献;A STUDY OF A TOURIST BASED GAMING INDUSTRY ON GUAM, MYK POWELL, University of Guam

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