■ ハワイ最新カジノ事情

 アジア最大の南国リゾート、シンガポールのカジノ合法化議論がいよいよ大詰めになってきている今日、太平洋の南国リゾート、ハワイのカジノ議論は前進どころか後退しているように感じます。

 まずハワイのカジノ事情をざっとおさらいしますと、カジノはもちろん、宝くじや競馬など「ギャンブル」と呼ばれるものは今日まですべて禁止されています。1980年代から90年代にかけてのカジノ合法化ブームの波にものらず何十年もの間にカジノ合法化の議論が何度も上がっては打ち消されてきました。

 カジノ賛成派達は、税金確保と観光繁栄を理由にカジノを含むギャンブルの合法化を20年間に渡ってハワイ議会に提案してきました。逆に反対派達は、経済効果は期待できるがギャンブルが州に組織犯罪をもたらすのではないか、ギャンブル依存症は増えないかなどの定番な反対理由を持っていました。さらにハワイのイメージを壊してしまう恐れが、一番大きな理由でした。ハワイにカジノを建てることにより、今までのイメージが崩れて逆に観光客離れにつながるという懸念が大きかったようです。

 ハワイのカジノ案は議会に提出されるたびに形を変えています。前回に出された案は、ワイキキなどハワイ諸島の中心街ではなく、地方にカジノ特別区域を作り、1〜2個に限定されたカジノライセンスを発行するという案でした。この案は、経済効果と社会的コストの両方を極力低くする案で、賛成派でさえもカジノがハワイに与える負の影響を強く件念していることが伺えられます。それと同時に、彼らにとってこの案はカジノがもたらす可能性を極力に限定し、反対派にも受け入れられるように作られた切り札的な案だったのかもしれません。しかしその案も通らず、ギャンブル合法化に反対している現共和党ハワイ知事Lingle氏の就任後は一層困難になりました。

 住民側の意見では、Media Research Groupの調査によると、ハワイ住民の57%は上の議員たちと同じ理由でギャンブル合法化に反対しています。それと同時に雇用増大や観光発展などに期待を寄せる声は80%にも上っています。ハワイのイメージ崩壊を含むギャンブルによる社会的コストが、観光発展を上回るという考えがある結果だと思います。

 このような状況でも最も可能性があるのは、船上カジノ(クルーズ旅行の一環として、船の中で小規模なカジノを設置したクルーズ)です。現在議員だけではなくクルーズ会社も州政府に限定三個のゲームライセンスを許可を申請中です。ハワイではカジノなしのクルーズでも人気がとても高く需要もあります。犯罪増加やイメージ崩壊など負の部分は地上カジノよりかなり低くなりますが、同じく経済効果も低くなるでしょう。しかし、クルーズ産業を盛り上げる一環として、まずは初歩として船上カジノから合法化するという手段はハワイにとっていいことではないのでしょうか?

 最後に、そういった議論以外に問題になっているのが先住民のハワイ民族の今後です。ハワイ民族はアメリカ本土の先住民と同じ扱いにはされておらず、「インディアンゲーミング規制法」の対象外となっています。しかし今日現在、ハワイ民族が先住民と認める法案、つまり「インディアンゲーミング規正法」がハワイ民族に適応されることになる案がアメリカ議会に提出されています。もしハワイ民族が先住民と認められ、さらにハワイ州が何らかの形でギャンブルを合法化した場合、先住民もギャンブルを合法に経営することができるようになります。ギャンブル自体が悪の行為ではなく、ハワイ独自の環境を守りたいという考えを持っているハワイ民族がカジノを受け入れるかどうかは謎ですが、ハワイ州政府と同じく動向が注目されます。

 ラスベガスへ行くハワイ住民は多く、ハワイのお金が他州に流れこんでしまいます。一番健全と見られる宝くじでさえも違法なハワイ。地上カジノをハワイで見る日は今のところ遠そうですが、カジノを観光発展の起爆剤としたい議員は数多く、これからもこの議論は続くだろうと予想しています。

参考資料 http://www.hawaii.gov/dbedt/gaming/intro.html
http://www.hawaii.gov/dbedt/gaming/

文責;Toshiaki Kawa

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